なぜ『記者ハンドブック』は編集者も持っておくべきなのか

手垢で小口が汚れた記者ハン コラム
手垢で小口が汚れた記者ハン

記者ハンドブック(記者ハン)は新聞記者が手元に置いて記事を書く時の参考にする本ですが、Amazonなどでも買えます。記者・ライターなら当然、さらに編集者も持っておいたほうがいいと思います。なぜでしょうか。

何種類かある記者ハンドブック

記者ハンドブックは大手新聞の各社が発行しています。読売新聞は『読売新聞 用字用語の手引』、朝日新聞は『【改訂新版】朝日新聞の用語の手引』、毎日新聞の『毎日新聞用語集2020年版』です。ここでは共同通信の『記者ハンドブック 第13版 新聞用字用語集』を取り上げます。筆者はこれらすべてを見て使ったわけではありませんが、大手紙の1冊と、共同のハンドブックは使ったことがあります(使っています)。基本的には、それぞれの会社のルールが載っています。

記者ハンドブックには何が載っているか

Amazonの記者ハンドブックの説明にはこうあります。

『正しい日本語で伝わる文章を』
漢字と平仮名どちらを使うのか、送り仮名はどう付けるのか、同音異義語の使い分けは?・・・。
用例が豊富な用字用語集と読みから引ける漢字表。外来語の正しい使い方も明記。
一般企業の企画・広報担当者からWEBライターまで、文章を書くすべての人にお薦めする日本語用字用語集の決定版です。
5年半ぶりに増補大改訂。

記者ハンドブックに載っているのは、「記事の書き方」「新聞漢字・仮名遣い」「幼児用語集」「書き方の基本」「記事のフォーム」などです。

たとえば「記事の書き方」では「見出し、リード、本文とはそれぞれどういうものか」「新聞記事は逆三角形に書け」というようなことが書かれています。

「漢字・仮名遣い」は、新聞漢字表、人名用漢字、送り仮名の付け方などが掲載されています。「幼児用語集」は、外来語用例集、紛らわしい法令関連用語など。「書き方の基本」の項目では、カタカナの使用、句読点、差別用語、不快用語など。「記事のフォーム」では、談話の書き方、選挙関連の記事の書き方や、死亡記事や官庁人事の書き方、日時・地名・人名・年齢の書き方などが掲載されています。数字の書き方や皇室用語の説明もあります。

手元にあるのは第11版ですが、730ページ超あって価格は2000円くらいです。

なぜ編集者も持つべきなのか

記事を書く記者・ライターは当然として、編集が持つべき理由はいくつかあります。

理由1 担当メディアのルールにあわせて原稿を直す必要があるから

そもそも雑誌にしてもWebサイトにしても、メディアであれば表記ルールを持っています。イチから独自に作っているところもありますが、記者ハンドブックに準拠しているところもあります。

つまり、担当しているメディアのルール(記者ハンドブック)にあわせてライターの原稿を直す必要があることが持っておくべき理由です。

理由2 編集者が原稿、キャプション、コラムなどを書くこともあるから

これに関連して、編集者が自分で原稿を書くこともあるはずです。原稿までは書かなくとも、ちょっとしたテキストを用意することはあるはずです。写真のキャプションだったり、スペースを埋めるための囲みのコラムだったり。そうしたちょっとした文字要素にもルールが適用されますから、記者ハンドブックは編集者も必携なのです。

理由3 誰もが読者になりえる「新聞」というフォーマット向けの、正しく分かりやすい日本語(の書き方)が書かれている

ほかにも理由はあります。たとえば、”正しく分かりやすい日本語”が書かれていることです。記者ハンドブックは”記者”とついているように、新聞社・通信社の記者向けのものです。このため、表記の仕方が”新聞的”です。新聞的とはどういうことかというと、「誰もが読む可能性がある」ということです。

たとえば雑誌であれば、ある程度読む層が絞られているのではないでしょうか。男性誌、女性誌。論談誌、ファッション誌、ホビー誌……。新聞には男性紙、女性紙はありません。ティーン紙は……中高生新聞、小学生新聞がありますが、基本的には成人を中心として誰もが読む可能性があります。

ですから表記の仕方や、使う用語も、ある程度専門的な用語であれば説明をしたり言い換えたりします。たとえばブロックチェーンという言葉。SDGsという用語。クリプトメディアであれば前者はいちいち説明しないでしょう。マチュアなインベスター向けの投資専門誌であればSDGsをいちいち説明しないでしょう。しかし新聞であればそうはいかず、カッコ書きや別項目などで説明をするはずです。

そうした特徴はありますが、いや、そういう特徴があるからこそ、記者ハンドブックには「誰もが分かるように書くにはどうしたらいいのか」が書かれているわけです。

理由+ 表記ゆれの多い原稿は「レベルが低い作り手」と思われる 

これは理由1、2と同じともいえますが、重要なので別項にしました。

たとえば、あるところで漢字で書いた言葉を、別のところではひらがなで書いたり、「・」を入れたり入れなかったり。そうした表記のルールが守られていない原稿を読まされたデスクや校正は「レベルが低い原稿(を書く人)だな」という評価をします。

うまい原稿、感心する書き出し、分かりやすい構成、気の利いた”たとえ”などはなかなか作ったり書いたりできません。しかし、ルールに基づいた表記にすることは、注意力があればできます。逆に言えば、できていないのは注意が足りないだけ。

編集者であれば、ライターが書いてきた原稿を読んで、どこが表記の間違いなのかが分からなければいけません。

そのためにも、編集者はスタイル・ルールを把握しておくべきです。そのためには記者ハンドブックは必携ですし、さらに言えば持っておくだけでなく、(少なくとも頭にスタイル・ルールが叩き込まれるまでは)事あるごとに開くべきだと思います。

タイトルとURLをコピーしました