下請けはツラいよ──アニメ制作会社が提訴。出版・編集業界でもある「契約書ないがしろ」問題

アニメ「東京BABYLON2021」の公式ウェブサイト(現在は閉鎖) オピニオン
アニメ「東京BABYLON2021」Webサイトより(現在は閉鎖)

アニメ制作会社がレーベルを訴えたというニュースを見ました。ニュースを見る限り、制作会社のアウトプットに「パクリ」疑惑という問題があったものの、弁護士は「下請法違反」としているようです。果たしてどんな事案なのでしょうか。どんなことが起きているのでしょうか。

事件の概要(原告の言い分)を整理

放送中止のアニメ「東京BABYLON」制作費求め提訴

4月に放送開始予定だったテレビアニメ「東京BABYLON(バビロン) 2021」の制作費用が支払われていないとして、下請け制作会社が講談社系のキングレコード(東京)に未払い分計約4億5千万円の支払いを求め、東京地裁に提訴した。

記事によると、原告が主張しているのは

・昨年11月下旬までに13話分を納品
・制作費計3億1460万円が同12月~今年8月に分割払いされる予定だった
・最初の支払い後の1月に一方的に契約を破棄された
・残りの2億8160万円など合意して制作に着手していた14~21話分の費用1億7182万円を支払え

ということのようです。

パクリ疑惑とは?

パクリ疑惑というのはどういうことかというと、昨年11月に先行公開されたキャラクターデザインが、韓国のアイドルグループの衣装に似ているなどと指摘されたそうです。

製作委員会が「模写があった」と公表し、一度は「再発防止に努める」としたそうですが、今年3月になり、「制作会社との信頼関係の欠如」を理由に制作中止を発表したといいます。

これについて制作会社は、「模写騒動後もキング社からはデザインの修正依頼があり、合意して放送に向けた作業を進めていた」としています。そして、「キング社の方針が一転し、残りの支払いを拒否された」というのが言い分だそうです。

契約書がなくても制作が稼働するという実態

あくまでこれは原告の言い分ですし、詳細は裁判で明らかになっていくでしょう。

ここで「やはりか……」と思ったのは、原告の訴状にもあるようなのですが、「正式な契約書は取り交わしていない」というところです。

正式な契約書がなくても実態として受注ー発注のやり取りがあれば、それは契約としてみなされるのではないかと思いますが、それならなぜわざわざ契約書が必要なのか、ということにもなってしまいます。

そもそもクリエイティブ業界はこうした契約書の類に疎いのは誰もが認めるところでしょう。書籍編集だって、「書籍が出来上がって見本と一緒に契約書を見た」という作家は結構いるはずです。

なぜそういうことは起きるかというと、制作する側は仕事をもらう(お金をもらう)側なので言いにくいとか、発注する側のほうが組織も大きいのでうやむやにしてしまう、といったことが理由でしょう。

発注する側こそが契約や金額については説明してあげるべき

ここで思うのは、受注する側は言いにくいものなんだから、発注する側が言ってあげるべきだろう、ということです。

「仕事を受ける時にギャラの提示がなければ受けない」というのは、やはりそれなりに強い(存在感のある)作家や制作会社でしょう。たいていは、お金のことは言い出しづらく、払ってくれるのを信じて作ってしまうものです。

筆者は現職で編集者をしています。単価は大きくないですが、努めてギャラ・原稿料などは事前にしっかり提示するようにしています。それは当たり前のことだと思います。

少なくとも自分にはフリーの経験、制作を受注する側の経験もあるので、発注する側にやって欲しいことが分かっているつもりです。だからこそ、それになるべく答えようとしています。

過去に、ある証券会社の冊子を作って、ほぼできてあとは印刷所に入稿するだけというところまで作ったのに、なしにされたことがあります。当時はある出版社の社員として受けていましたが、これがフリーで受注した仕事だったら……と思うと本当に恐ろしい(その経験があってから、もう何年も経ちましたが、そのI証券のことは大嫌いです)。

下請法って知ってますか

本件について弁護士が、下請法違反の疑いがあると指摘しているそうです。

下請法とは、「下請取引の公正化・下請事業者の利益保護」を目的に設置された法律です。要は立場の弱い下請け(制作を受注する側)を守る法律です。

発注する側には、「発注の際に書面を交付する」「支払い期日を(制作物の)給付受領から60日以内に決めること」「取引の内容を記載した書類を2年保存すること」などが求められます(公正取引委員会

禁止事項として、「受領拒否」「代金支払い遅延」「代金の減額」「返品」「報復措置」「不当な給付内容の変更・やり直し」などが定められています。

今回の事件については、納品物に瑕疵があったようですが、その点について制作会社が責任を認めているのか、発覚した後に両者でどういう話し合いをしたのか、などを踏まえないとけいけませんし、その上で、「果たして支払わないことが不当かどうか」が争われるのでしょうか。

下請け法は、アニメ制作に限ったものではないので、編集・ライティングなどを仕事にしている人は自分の身を守るためにぜひ知っておきたい法律です。

下請法の概要(公正取引委員会)

タイトルとURLをコピーしました